ベチバーは、調香師にとって最も扱いが難しく、最も興味深い原料の一つです。同じイネ科の植物の根から取れる精油ですが、産地によって香りがまったく異なります。ハイチ産、ジャワ産、インドのラジャスタン産、それぞれに固有の個性があります。
ハイチ産ベチバーの特徴 ¶
ハイチ産ベチバーは、煙と土と、わずかな海の塩気を持ちます。蒸留に時間をかけるため(通常24時間以上)、重く複雑な香りになります。「Vétiver Gris」に使用しているのはハイチのティビュロン半島産で、現地の小規模蒸留所から直接仕入れています。この産地のベチバーは、乾季の収穫分と雨季の収穫分で香りが異なるため、毎年届いたものを嗅いで処方を微調整しています。
ジャワ産との比較 ¶
ジャワ産ベチバーは、ハイチ産よりも明るく、木の香りに近い印象です。煙の要素が少なく、グリーンな側面が前に出ます。フレッシュな香りを作るときにはジャワ産が向いていますが、「Vétiver Gris」が目指す深みのある土の香りには、ハイチ産の方が合っています。どちらが優れているということではなく、作りたい香りによって選ぶものです。
ベチバーを香水に使うときの注意点 ¶
ベチバーは非常に粘度が高く、他の原料と混ぜるときに均一に溶けにくい性質があります。アルコールに溶かす前に、少量のイソプロピルミリスタートで希釈すると扱いやすくなります。また、ベチバーは時間とともに香りが変化するため、調香後に最低2週間は熟成させてから評価することが重要です。最初に嗅いだときの印象と、2週間後の印象が大きく変わることがあります。
ウェルネスとしてのベチバー ¶
アーユルヴェーダの伝統では、ベチバーは「冷却する」植物として扱われてきました。夏の暑い時期に、ベチバーのルームスプレーを使うと、空間が少し落ち着く感じがあります。科学的な根拠を主張するつもりはありませんが、重く落ち着いた香りが、慌ただしい気分を少し静める効果はあるかもしれません。
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